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【記者コラム】55歳郷坪 同期との粋なラストラン

 神奈川県所属の70期生・郷坪和博(55)が6月15日の伊東競輪1Rを最後にユニホームを脱いだ。その一場所前にホームバンクの川崎を走っていたが、ラストランに伊東を選んだ理由が粋だった。「本当はデビューした西武園で走りたかったんですが、ちょうど6月に開催がなくて。同期の原司君(53=佐賀)と武智尚之君(54=愛媛)がたまたま伊東で配分が一緒で〝郷坪さんと一緒に走りたい〟と言ってくれたんで、伊東で最後のレースをしたいとお願いしました」と明かした。

 郷坪と原と武智は同部屋だったという。大体各部屋4人ずつが割り当てられるが、そのうちの3人が50代まで現役で奮闘し、ラストランで相まみえることになった。初日は郷坪と原が2Rで対戦。郷坪は平川慎太郎―原の佐賀ラインの3番手の位置を選択した。「32年と11カ月走ってきたけど、あと3レースしか走れない。自分の〝アレ〟を貫いて同期の原君の3番手を固めたい」と理由を説明。結果は平川が主導権を奪えず、番手から原が仕掛けて出たが不発だった。

 武智とは2日目、最終日で対戦。特に印象に残ったのが最終日の1R。中村秀幸(高知)の先行1車の番組だったため、四国ラインで番手を回ることになった武智との競りを選択した。「先行1車の時は番手と決めてるんで。最後なんで悔いなく行かせてもらいました。今までも同期に競りに行っている。今回だけ行かないのは彼に失礼になるんで」と話した。レースは先行する中村の番手で内武智、外郷坪で競り。打鐘で決着がつき中村―武智―郷坪で最終バックを迎えた。郷坪は直線で力尽きたが武智は番手から伸びて1着。記者には郷坪の惜別のエールに、武智が応えた勝利のように思えた。郷坪に「競輪」の醍醐味(だいごみ)を味わわせてもらった。

 ◇郷坪 和博(ごうつぼ・かずひろ)1969年(昭44)12月8日生まれ。神奈川県出身の55歳。92年8月に70期生として西武園でデビュー。師匠は東晃。通算2689戦153勝3V。1㍍67、70㌔。血液型O。

 ◇鈴木 智憲(すずき・とものり)1967年(昭42)生まれ。愛知県出身の57歳。92年入社。97年から2年間競輪記者を経験。当時は神山雄一郎、吉岡稔真が東西の横綱として君臨していた。昨年4月に26年ぶりに現場復帰。

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